世界初の「血管内から血管外組織に光を届ける」医療技術開発を行うイルミメディカル株式会社(所在地: 愛知県名古屋市)はシードラウンドの資金調達にて約1.7億円の資金調達を完了。開発を一層の加速化へ
「光を利用した治療技術の実用化を促進し、これまで治療のできなかった患者さんに有効な治療法を提供する」ことを目指し、これまでにない革新的な光治療用医療機器の研究開発を行う名古屋大学発ベンチャーのイルミメディカル株式会社は、総額 1.7億円のシードラウンドのエクイティによる資金調達が完了したことをお知らせします。今回の資金調達により、累計資金調達額は2億円を超えました。
- 【イルミメディカルの設立背景】
光学技術、血管内治療技術※1はともに、日本が世界をリードする技術であり、すでに社会実装がなされている分野です。当社は、一見すると交わりのないこれら2分野を組み合わせることにより、これまでにない治療・診断技術を日本発で世界に先駆けて開発・提供することを目指して設立されました。
医療技術(新医薬品、新医療機器)の社会実装には、基礎研究、応用研究、非臨床・臨床試験の全てをクリアする必要があります。また、有効性、安全性に加え、高品質な医療を持続的にグローバル規模で提供するためには、経済力も必要です。当社が目指す光医療の社会実装も同様に、実現のためには多くのリソースが必要であり、当社単独での達成は困難であると認識しております。このため、当社は設立当初より、外部企業、アカデミアとの協業を積極的に行ってまいりました。
- 【光治療の現状とイルミメディカルの取組】
当社の主力事業に関連する、光を用いた研究報告は近年急増しています(下図)。
図. PubMed®にて「light+therapy」で検索した論文数の推移(1960年~2023年)
現在、世界中で光技術の医療応用に向けた研究が盛んに行われていますが、その開発の中心は薬剤側に偏っています。しかしながら、光治療は光と薬剤をコンビネーションで使用する技術であるため、単純に薬剤が開発されるだけでは不十分であると考えます。例えば、小動物では体外からの光照射により体内まで十分に光を届けられる一方で、ヒトに近い大動物では体の深部まで光を届けることができません。すなわち、現在行われている光治療の研究成果の実用化を阻んでいるのは「光照射の方法」であり、これをアップデートすることで「光を目的部位に届けられない」という課題を解決し、光治療技術の臨床応用・市場拡大に繋げられると考えます。
そこで当社では、体内の深部臓器を含む全身のあらゆる部位に、高い選択性で、かつ、高い安全性で、高効率で光を目的組織に届ける血管内光照射システム ET-BLIT®※2を開発しています。
血管は全身を網羅した、いわば「体内道路」のようになっています。そこで、当社ではこの血管を通して光を届ける技術開発を進め※3、光医療を社会実装に繋がるものにすべく、光照射技術のプラットフォーム化に取り組んでいます。プラットフォームを確立し、当社技術のライセンスアウト・あるいは共同開発を行うことで早期収益化と医療提供の実現ができると考えています※4。
当社「光を身体のどこにでも、ピンポイントに届けることを可能とする技術」の確立により、これまで数多くの研究がされていながら、実現できていなかった「光を用いた新たな医療の提供」ができると考えています。
これにより、
①既存薬剤の適応拡大
②新薬のポテンシャルの最大化
③新たな創薬モダリティとしての活用
に繋がることが期待されます。
また当社では将来的に、ET-BLIT®に診断機能も搭載することで、「セラノスティクス※5」の実現を目指しており、すでに実現に向けた研究に着手しています。
これら当社の取組は全て、現在治療法がない患者さんやその患者さんのご家族の健康・生活の質向上に資する取組と考えています。
当社は血管内からの光照射技術、光照射デバイスのプラットフォーム化を行い、特に血管内からの光照射を活用した医療技術を提供するグローバル医療メーカーを目指し事業を進めて参ります。
※1 血管内治療:
直径1mm程度のカテーテルを血管に挿入し、心臓や脳血管の詰まりを治す治療技術。
※2 ET-BLIT®(イーティーブリット):
血管内からの光出射により組織照射し、治療を行う技術。当社の血管内治療システムの登録
商標。
※3 当社の創業者により血管内からの光出射で組織照射に成功した論文:
eBioMedicine 2022;85: 104289 https://doi.org/10.1016/j. ebiom.2022.104289
※4 2024年2月29日 プレスリリース「創業1年での特許出願数が10件に到達!体の深部臓器にも光照射が可能な光照射デバイスの基本特許の特許査定を受領」
※5 セラノスティクス: 治療と診断を一体化して行う技術
- 【主な資金使途】
・研究開発費(自社、アカデミア及び企業との共同開発、グローバルの知財化)
・中核人財の採用
- 【出資者からのコメント】
■リアルテックホールディングス株式会社
グロースマネージャー 平泉 裕美氏
イルミメディカルが開発する光照射デバイスの導入によって、治療法が無かったがん患者や侵襲性の低い治療を望む患者への新たな治療方法としての選択肢が広がり、大きなアドバンテージとなると考えております。また、光を使用した治療法が、がん治療のみならず神経疾患など幅広い疾患に対しても有効性を発揮できたとき、世の中の創薬としては非常に大きなブレイクスルーになると考え、期待しております。
創業者の塚本さんとは岐阜テックプランターにて出会いましたが、当技術を世界に広める覚悟と熱意に心を打たれました。塚本さんを中心としたチームと共に事業成長に伴走できることを楽しみにしております。
■株式会社mint
Principal岡澤 雄介氏
イルミメディカル社が目指す新しい”光のデリバリー”にはもちろん期待しておりますが、同じくらい代表の塚本さんと佐藤先生の想いと自信に惚れ、今回は出資のご機会をいただきました。mintも同社の取り組みを全力で応援していきます。
■株式会社MTG Ventures / Central Japan Seed Fund
代表パートナー 伊藤 仁成氏・キャピタリスト 中田 千尋氏
塚本代表とパートナーの名古屋大学 佐藤先生の技術と思いに共感して設立出資させていただいてから早一年。イルミメディカル社は短期間でコア技術の知財を獲得し、同時に「光学技術」と「血管内治療技術」に関する各企業との事業連携を進めてきました。我々も各社の開発ニーズの強さを目の当たりにし、領域への注目度の高さを実感しております。
このような中、この度シードラウンドにて新たに力強い株主に加わっていただき、同社の事業をさらに加速させられることを大変嬉しく思っております。
日本初の光学技術の実用化を行い、より多くの患者さんへ新たな治療法を届けるべく、CJSは今後も全力で支援して参ります。
■株式会社OKBキャピタル
ベンチャー投資チーム ディレクター 古川 諒太氏
「イルミメディカルが確立を目指す『光を利用した治療技術』の非常に大きなポテンシャル」と「塚本代表が持つ『有望な研究シーズを社会実装させる』という熱い想い」に共感し、中部エリアをメインに企業経営を総合的にサポートする専門化集団「名南コンサルティングネットワーク」の名南М&Aとともに運営する「OKB4S循環ファンド」より投資を行いました。
イルミメディカルに対しては、リバネスとともに展開している「岐阜テックプランター」を通じて産学官金一体となったご支援をさせていただいております。今回の投資により、地元発のディープテック系スタートアップであるイルミメディカルへのご支援を一段と加速してまいります。
【名古屋大学大学院医学系研究科・高等研究院/ 共同創業者 佐藤 和秀 CMO のコメント】
この度、当社のシードラウンドでの資金調達を完了できたことをとても嬉しく思いますし、サポート頂いている皆様に感謝申し上げます。
私自身は、新規治療法の開発を夢見て臨床医師となり、がん患者さんと向き合う中で新規のモダリティを開発し、より良い治療選択肢を提案できる様にと研究開発を日々頑張っております。幸いにも光を用いた治療が脚光を浴びるようになってまいりました。この新しい光治療分野でぜひとも日本発の新技術を提案できるよう引き続き誠意、頑張りたいと思います。
当社事業にサポートいただける皆様とともに、世界に羽ばたく医療メーカーを目指して患者さんへの貢献を達成したいと存じます。引き続きのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
【代表取締役 塚本 俊彦CEOのコメント】
この度、当社のシードラウンドでの資金調達(エクイティ)を完了できたことをとても嬉しく思います。また、非常に強力なパートナーの皆様を株主として迎えられ、大変光栄に思います。当社の設立は2023年2月です。約1年前には考えられなかったほどの事業進捗です。
前職では医療機器の開発を行っており、新たな医療技術を日本から生み出す困難さを痛感していました。その一方で、「やればいいモノができるし、もっと患者さまに貢献できるのに」という気持ちも併せ持っていました。そうした日本の状況を課題だと思い、設立したのが当社になります。
経済的な観点からみると、日本は医薬品、医療機器ともに大幅な貿易赤字となっています。医療分野において、日本から世界で戦える製品、サービスを生み出す必要があります。
当社では、一見すると関係のないように思われる「光学技術」と「血管内治療技術」の組合せにより、革新的かつ実用的な世界初の治療技術開発を行っています。当社の技術は無限の可能性を秘めていると考えます。
当社事業にご賛同いただいた皆様とともに、世界に羽ばたく医療メーカーを目指してまいります。